学会案内

会長挨拶

会長挨拶

2021年12月に一般社団法人日本育種学会の会長(代表理事)に就任いたしました.歴史と伝統のある本会の会長を拝命し,責任の重さを感じております.微力ではありますが,理事,代議員,運営委員,そして会員の皆様方にご協力いただきながら,日本育種学会の発展のために貢献できればと考えております.どうぞよろしくお願い申し上げます

日本育種学会は1951年に創設され,2015年に「一般社団法人日本育種学会」に移行しました.本会では,育種に関する研究および技術の進歩,研究者の交流と協力,および知識の普及をはかることを目的としており,学会誌(英文誌「Breeding Science」,和文誌「育種学研究」)の刊行,講演会・シンポジウムの定期開催,社会への情報発信(ホームページでの声明・提言の公表,記者発表,市民公開シンポジウム,日本学術会議との共催シンポジウム)などの活動を展開しております.新型コロナウィルス感染症の拡大により2020年3月の大会(講演会)は中止となりましたが,その後の4大会はオンライン開催とし,試行錯誤しながらも,研究成果の発表,ディスカッションを通した研究交流,学生を含む若手研究者の育成を継続することができました.オンライン開催にご尽力・ご協力いただきました運営委員・会員の皆様に,心より感謝申し上げます.

育種研究の目標は新品種の開発(品種改良)であり,“それまでの不可能”を可能に変えた数々のブレイクスルーにより育成された食用作物,園芸作物,工芸作物,林木などの新品種を通して人類福祉に貢献してきました.世界人口の爆発的増加に加えて,地球規模での環境変動が新たな脅威となっている現在,不安定環境下においても持続可能で安定生産が可能な多様な農業生産システムの構築が求められており,育種研究に対する期待も高まっています.関連学会などと協力・連携し,このような課題の解決を目指す必要があると考えております.

品種改良は育種研究の出口に位置づけられる実用化研究でありまして,そこに辿り着くにはさまざまな基礎研究,応用研究の進展が不可欠なことは論を待ちません.育種学会では,最先端の知見や科学技術を積極的に取り入れることによって基礎研究,応用研究においてブレイクスルーを起こし,“不可能を可能に変える”さまざまな有用変異の作出に成功してきました.過去の講演会のプログラムを眺めてみますと,倍数性・種間雑種,突然変異,遺伝資源,バイオテクノロジー,分子遺伝,遺伝子組換えなどのキーワードがピックアップされます.これらの研究成果は育種技術として現在広く利用されているだけでなく,古くて新しい課題として新たな研究が展開されています.最近では,ゲノム解析やゲノム編集技術を利用した基礎・応用研究が精力的に行われており,新たなブレイクスルーが生み出されるとともに,新品種の開発という実用化研究も始まっています.特に,作物自身の遺伝子配列を改変したゲノム編集作物は,食料の安定生産に貢献する優れた品種を短期間に育成可能な育種技術として研究が加速されています.日本育種学会は,ゲノム編集技術を極めて有用な育種技術の一つとして位置づけ,その適正な利用を推進しているところであります.しかし,一方で,科学的に誤解のある情報に基づく批判的意見も見受けられます.科学的見地に基づいた正確な情報を広く提供することが学会の責務でありますので,学会ホームページなどを通じて多くの皆様にわかりやすく提供しているところであります.

英文誌Breeding Scienceの発刊は本会の基幹的事業の一つでありますが,本誌のImpact Factor(IF)は,2020年以降安定的に2を超えており,2022年には2.383と順調に伸びています.本誌の編集,査読,組版などに携わっていただいている皆様,優れた学術論文を投稿していただいている会員の皆様,そして科研費「研究成果公開促進費(国際情報発信強化)」のご支援に対しまして厚く御礼申し上げます.引き続き,投稿者にとってよりアクセシビリティのよいジャーナルを目指して,Breeding Science誌の完全オープンアクセス化などを進めているところであります.

会員の皆様にとってより魅力ある日本育種学会を目指して努めてまいりますので,今後ともご支援ご指導のほどよろしくお願い申し上げます.

一般社団法人 日本育種学会
代表理事・会長 加藤 鎌司