学会案内

会長挨拶

会長挨拶

一般社団法人 日本育種学会
代表理事・会長  中園 幹生

 2024年3月に一般社団法人日本育種学会の会長(代表理事)に就任いたしました中園幹生と申します.歴史と伝統のある日本育種学会の更なる発展のために,理事,代議員,運営委員,そして会員の皆様方のご協力をいただきながら,微力ではありますが,会長の責務を果たす所存です.どうぞよろしくお願い申し上げます.

 日本育種学会は1951年に創設され,2015年に「一般社団法人日本育種学会」として新たな一歩を踏み出しました.本会は,育種に関する研究および技術の進歩,研究者の交流と協力,および知識の普及を図ることを目的として活動しており,学会誌(英文誌「Breeding Science」,和文誌「育種学研究」)の刊行,講演会・シンポジウムの定期開催,そして社会への情報発信(ホームページでの声明・提言の公表,記者発表,市民公開シンポジウム)などを展開しております.特に,英文誌Breeding Scienceの刊行は本学会の基幹事業の一つです.本誌の編集,査読,組版などに携わっていただいている皆様,優れた学術論文を投稿いただいている会員の皆様,そして科研費「研究成果公開促進費(国際情報発信強化)」のご支援に対し、心より厚く御礼申し上げます.引き続き,投稿者にとってよりアクセスしやすいジャーナルを目指し,Breeding Science誌の完全オープンアクセス化などの改革を推進していきます.

 新型コロナウィルス感染症の拡大により,第137回講演会(令和2年春季大会)は中止となり,その後の4大会(第138回~第141回講演会)はオンライン開催となりました.しかしながらコロナ禍の収束に伴い,第142回講演会(令和4年秋季大会)から再び対面での講演会の開催が実現しました.困難な時期においても,研究成果の発表やディスカッションを通した研究交流,学生を含む若手研究者の育成などの本会の取り組みを継続できたことが,現在に至る本会の活動を支えていることにつながっており,大変喜ばしく思っております.これもひとえに会員の皆様のご理解とご協力の賜物であり,心より感謝申し上げます.

 育種研究は,新品種の開発(品種改良)が目標であり,数々のブレイクスルーを経て“それまでの不可能を可能”に変え,食用作物,園芸作物,工芸作物などの新品種を通して人類福祉に貢献してきました.近年は,世界人口の爆発的増加に加え,地球規模での環境変動が新たな脅威となっております.このような時代において持続的かつ安定した食料生産を実現するために,これまでの研究に加え,スマート農業などの農業分野におけるSociety5.0の実現も期待されており,育種研究に対する期待はますます高まっております.本会は,関連学会とも協力・連携しながら,このような課題に取り組んでいきます.

 品種改良は育種研究の出口に位置づけられる実用的な研究開発段階であり,そこに辿り着くにはさまざまな基礎研究や応用研究の進展が不可欠であることに議論の余地はありません.日本育種学会では,倍数性・種間雑種,突然変異,遺伝資源,バイオテクノロジー,分子遺伝,遺伝子組換えなどの知見や技術を積極的に取り入れ,様々な有用品種の作出に成功してきました.最近では,育種研究の新たなブレイクスルーとして,ゲノム解析やゲノム編集技術などを駆使した品種開発の実用化研究が進展しており,とりわけ作物自身のゲノム配列を改変したゲノム編集作物は,短期間で優れた品種を育成し,食料の安定生産に貢献する育種技術として研究が加速しています.本会では,ゲノム編集技術を有用な育種技術の一つとして位置づけ,その適正な利用を目指していきます.しかし,その一方で,科学的に誤解のある情報に基づく批判的意見も見受けられます.多くの皆様にゲノム編集などの新しい育種技術の有用性を理解していただけるよう,学会ホームページなどを通じて積極的に情報発信を行っていきます.

 今後も,会員の皆様にとってより魅力ある日本育種学会を目指して努めてまいりますので,ご支援とご指導を賜りますようお願い申し上げます.