第46回岩手育種談話会を下記の要領で開催致します。今回の談話会は、サントリーグローバルイノベーションセンターの瀬川 天太氏、岩手大学農学部の手塚 拓海氏に下記のテーマで話題提供していただくことにしました。皆様の御参加をお願い申し上げます。また学生の参加を歓迎します。
本談話会は岩手農林研究協議会(AFR)、植物生命科学セミナー及び岩手生工研公開セミナーとの共催で開催されます。
- 瀬川 天太 氏(サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社)
「ホップの雌雄ゲノム解読と性決定遺伝子の同定」 - 手塚 拓海 氏(岩手大学農学部)
「イネ胚発生における背腹軸形成機構の解明」
日 時:2025年11月10日(月)15:30〜17:30
場 所:岩手大学農学部6番講義室(農学部南講義棟)
内容1:ホップ (Humulus lupulus) はXY型の性決定システムを持つ雌雄異株のアサ科カラハナソウ属の植物である。XY型性決定システムではY染色体上の因子が性を制御する「アクティブY」型がよく知られるが、ホップはX染色体と常染色体の数の比により性が決定される「X-Aバランス」型とされており、その分子メカニズムは未解明である。ホップはビール産業で用いられる雌のみでゲノム解析がされてきたが、本研究では、雌雄ホップ (2n=18+XX/XY) およびカナムグラ (H. japonicus, 2n=14+XX/XY₁Y₂) 雄株の高精度ゲノムを構築し、Y染色体ゲノム配列を利用して、性染色体上の組換え抑制進化層解析を行うことでX染色体上の性決定に関わる領域を絞り込んだ。さらに比較ゲノムおよび遺伝子発現解析などを通じて性決定遺伝子EXERを同定したので紹介する (Akagi T, Segawa T, et al. 2025. Nat. Plants)。
内容2:被子植物は伝統的に双子葉植物と単子葉植物に分類されてきた。2つの植物群の違いの一つが子葉の枚数である。双子葉植物では茎頂分裂組織を中心として2枚の子葉が形成されるため、鏡像対称のボディープランを持つ。一方で、単子葉植物では子葉が形成される背側と茎頂分裂組織が形成される腹側という非対称性から背腹軸を定義することができる。この背腹軸は単子葉植物に特徴的なボディープランをもたらす原理であるが、その形成メカニズムは未解明である。本研究ではイネをモデルに背腹軸形成機構を解明するため、背腹軸形成が異常となるbaby boom三重変異体を解析した。その結果、三重変異体では胚の中でオーキシン輸送やシグナル伝達が異常になっており、背腹軸形成はオーキシンによって制御される可能性が高い。本発表では、どのようなメカニズムでオーキシンが背腹軸を形成するのかを紹介する。
講演終了後に講師のお二人を囲んでの情報交換会を行います。情報交換会にご参加の方は準備の都合上、以下の連絡先に10月31日(金)までにご連絡下さい。こちらの方も是非ご参加くださるようお願いいたします。
連絡先:岩手大学農学部 畠山勝徳、手塚拓海(TEL: 019-621-6151, 6152)
e-mail; khatake
iwate-u.ac.jp, ttezuka
iwate-u.ac.jp